5.2 保存力と中心力
一般に力 は位置ベクトル だけでなく、速度 , 時間 等 の函数である: . 今、 が だけの函数 のとき、 を「力の場」という。 一般に、空間の各点 にベクトルが与えられたとき、そのベクトルの 総体を「ベクトル場」という。同様に、空間の各点 にスカラー量が 与えられたとき、そのスカラーの総体を「スカラー場」という
以下、簡単のため を仮定する。
仕事は一般には、運動の起点
と終点
以外にその運動の経路
にも
依存するため、それを
と書く。
(例)
2 次元の運動で、
, かつ
が座標原点、
のとき、
から
まで引いた直線の経路を
,
を
,
を
とすると
が , にはよるが、経路 には よらないとき、 を「保存力」という。 この場合、ポテンシャル(位置エネルギー)による記述が可能である。
(力が保存力であるための条件)
線積分 に対して、 経路を逆に辿った場合の線積分を = で表す。 である。 また別の経路 を考えると、 のとき、 . つまり、 . すなわち、 から を巡って、再び に帰ってくる 閉じた経路を とすると . これは、しばしば と書かれる。 すなわち、「 が保存力なら、経路を一周するとその力が した仕事はゼロ」である。
また逆に、任意の閉じた経路に対して ならば、 は保存力である。実際、起点 , 終点 を巡る 1 周の線積分を 考えると、任意の , に対して . つまり . 従って、 は によらず である。
まとめると
一般に
が保存力なら、起点
を固定して
(力とポテンシャルの関係)
以下、 は保存力とする。
(gradient の幾何学的意味)
Taylor 展開より
(中心力)
万有引力の様に、ポテンシャルエネルギー
が
の
大きさ
だけの函数のとき、そこから導かれる保存力を
「中心力」という。このとき
参考
(偏微分、全微分) (2 変数で説明する)
2 変数の連続函数
に対して
2 階の偏微分は
(微分形式)
一般に、2 次元平面内で連続な函数
,
に対して
(1 変数の場合)
(連続) なら、
を積分して
(線積分)
(区分的に) 微分可能な経路
with
とすると
(微分形式の原始函数)
微分形式
が連続的微分可能な函数
を
用いて
と書ける時、
を微分形式
の
原始函数という。この時
(命題) 微分形式
が平面内で原始函数をもつ
平面内の任意の閉じた経路
に対して
(証明)
, として、O.K.
に対して、経路の取り方によらず
(H. カルタン「複素函数論」(岩波) 参照)