>保存力と中心力
物理学基礎論 A
基本的例題(II)
運動の保存量 (時間に依存しない量) の主なものは
エネルギー、運動量、角運動量であり、これらはある条件のもとに
それぞれ次の保存則を満す。
- エネルギーの保存則
スカラー量の保存 (内積に関係)
- 運動量の保存則
ベクトル量の保存
- 角運動量の保存
ベクトル量の保存 (外積に関係)
これらは、いずれももとの運動方程式を積分して得られる。それ故、
これらの保存則を「運動方程式の積分形」という。
(保存則の効用)
-
- 運動の詳細によらない運動学 (kinematics) である。力の
性質 (保存力かどうか等) だけで決まる。
-
- エネルギー保存則はスカラー量の保存 (加算的:質点系で特に有用)
であり、しばしば運動方程式を直接解くより運動の解法が容易になる。
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- 微視の世界では、力自身よりむしろポテンシャルの概念が
より本質的。
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-
簡単のため、まず 1 質点の保存則を議論する。
5.1 仕事と運動エネルギー
1 質点の運動方程式
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と速度
の内積をとる。
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両辺を時刻
から
まで積分して
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ここに
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を、それぞれ運動エネルギー (kinetic energy)、
から
の
間に力
が質点にした仕事という。これらを使うと Eq. (5.3) は
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と表わされる。すなわち、”質点の運動エネルギーの増分は
その質点になされた仕事に等しい。''
ここから、仕事とエネルギーは実は同じものである事がわかる。また、
を
で微分して
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これを仕事率という。
(仕事の意味)
質点の運動を、ある起点
からの距離
を媒介変数として表わすと
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ここに、
は第 3 章で議論した接線ベクトル、
は力の接線成分、
は各点における力と接線の間の角である。
の積分で、区間
を
等分して
(
-
),
,
とすると
と書いて、これを経路
:
にそった線積分という。”仕事は一般には経路による。”
つまり、起点
から終点
までのまた別の経路
を
とすると、一般には
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実際、起点と終点を入れ替えるだけでも、仕事の符号は変る。
と同じ経路を、今度は
を起点、
を終点と
する経路を
で表すと
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が経路によらない時、力が「保存力」であるという。
この時、
はあるスカラー
函数
の偏微分係数(導関数) で書ける
(
)。
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これを、まとめて (ベクトル記法で)
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と書き、
をナブラ (nabla)、あるいは
を
gradient いう。これらは、線型微分作用素 (operator) である。
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(例)
重力、バネの力、万有引力、クーロン力、
保存力
摩擦、空気の抵抗、
非保存力
[仕事とエネルギーの単位]
力
距離 =
(ジュール)
MKS 単位
cgs 単位では
(エルグ)
1 N=
dyne より、 1 J=
erg
また、仕事率の単位は 1 W (ワット) = 1
(簡単な例)
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- 1 kg の重りを静かに 1 m 持ち上げるために
必要な仕事 (エネルギー) は約 9.8 N
m=9.8 J
-
- 等速円運動では力の向きと速度の向きが垂直より、
力は仕事をしていない。
運動エネルギーが保存される。
すなわち、速さ (速度の大きさ) が一定
-
- 1 次元運動
- (自由落下運動)
-軸を垂直上方向にとって、
重力は
より
そこで、
を重力の位置 (ポテンシャル) エネルギーとすると
. そこで、
で書いて
Eq. (5.5) は
. つまり
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これを、(力学的) エネルギーの保存則という。
- (バネの運動) 復元力は
より
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そこで、
をバネの位置エネルギーとして
より
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- 万有引力ポテンシャル: 3 次元 (or 2 次元) 極座標で
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偏微分の公式
と動径方向の単位ベクトル
を用いると
すなわち、万有引力は動径方向(の逆) を向く。
この様に力の方向が座標原点方向を向く力を「中心力」という。この時、
ポテンシャルは
の向きによらず、その絶対値
だけの
函数である。
>保存力と中心力
物理学基礎論 A
基本的例題(II)
Yoshikazu Fujiwara
平成19年5月29日